「うちの会社、今期は赤字になっちゃった…。これじゃあ、銀行からの融資なんて絶対ムリだよね…?」
こんにちは!
元銀行員で、現在はファイナンシャルプランナーとして中小企業の経営者さんのお金まわりのご相談に乗っている田中美咲です。
実は、こんな風に諦めかけている社長さん、とっても多いんです。
でも、ちょっと待ってください!
赤字だからといって、融資の道が完全に閉ざされるわけではないんですよ。
私が銀行員だった頃の裏話をすると、決算書の内容はもちろん大切ですが、それと同じくらい「どう見せるか」「どう伝えるか」が融資判断に影響することも少なくありませんでした。
この記事では、赤字決算でも融資の可能性をぐっと引き上げるための、決算書の改善ポイントと銀行への伝え方のコツを、私の経験を交えながら分かりやすく解説していきます。
「え、そんなことで変わるの!?」って驚くような、今日からできるヒントがきっと見つかるはずです。
一緒に、あなたの会社の未来を切り開く一歩を踏み出しましょう!
融資の基本と赤字企業への影響
「そもそも銀行って、決算書のどこを見てるの?」
「赤字だったら、やっぱり印象悪いよね…?」
そんな疑問にお答えしますね。
まずは、銀行融資の基本と、赤字決算が審査にどう影響するのか、そのリアルなところを見ていきましょう。
銀行が融資判断で見る3つのポイント
銀行が融資の可否を判断するとき、主に次の3つのポイントをチェックしています。
1. 財務状況(定量評価)
これは、決算書に書かれている数字のことですね。
会社の安定性、収益性、成長性、そして何より「貸したお金をちゃんと返してくれる能力(返済能力)があるか」を見ています。
具体的には、税引後の当期純利益に減価償却費を足した金額で、大まかな返済能力を把握したりします。
2. 保全状況(担保・保証)
もしもの話ですが、万が一会社が返済できなくなった場合に、銀行が貸したお金を回収できるか、という視点です。
不動産などの担保や、経営者個人の保証、信用保証協会の保証などがこれにあたります。
担保があれば、赤字でも融資のハードルが下がることがあります。
3. 定性評価(経営者の資質・事業の将来性)
数字だけでは見えない部分も、実はすごく重要なんです。
経営者の方のこれまでの経験や経営に対する熱意、そして何より「この事業はこれから伸びるのか?」という将来性ですね。
事業計画書の内容や、社長さんとの面談を通じて、銀行員はここをじっくり見ています。
この他にも、融資を何に使うのか(資金使途の明確性)や、他の銀行との取引状況なども考慮されますよ。
赤字=即NGではない!審査の現実
「やっぱり赤字だと、銀行の心証は最悪なんじゃ…」と不安になりますよね。
でも、安心してください。
赤字決算だからといって、即座に「融資NG」となるわけではありません。
もちろん、黒字であるに越したことはないのですが、銀行も赤字の「中身」を見ています。
例えば、こんな赤字なら「仕方ないね」「将来に期待できるね」と判断されることもあるんです。
- 創業赤字: 会社を立ち上げたばかりの時期は、どうしても初期投資がかさみますよね。これは計画的な赤字と見なされやすいです。
- 一時的な赤字: たまたま今期だけ、特別な事情で赤字になった場合。例えば、大きな設備投資をした、退職金がまとまって出た、など。営業利益はしっかり黒字、というケースも前向きに評価されやすいです。
- 減価償却による赤字: 会計上の費用である減価償却費が大きいために赤字になっている場合。実際には会社からお金が出ていっているわけではないので、資金繰りに余裕があれば問題視されにくいことも。
- 先行投資による赤字: 新しい事業や研究開発のために、計画的に費用を使った結果の赤字。将来的に大きなリターンが見込めるなら、銀行も応援したくなるものです。
大切なのは、「なぜ赤字になったのか?」そして「来期以降、どうやって黒字化していくのか?」を、銀行にしっかりと説明できることです。
もちろん、2期連続、3期連続…と赤字が続くと審査は厳しくなりますが、それでも具体的な改善計画があれば、可能性はゼロではありません。
「決算書」以外で見られている評価項目とは?
決算書の数字は確かに重要です。
でも、それだけが全てではありません。
銀行は、数字の裏側にある「会社の本当の姿」を見ようとしています。
具体的には、こんな項目が評価されています。
評価項目 | 見られているポイント |
---|---|
経営者の資質・経営能力 | 経営者の経験は十分か、リーダーシップはあるか、経営理念に共感できるか、など。 |
事業計画の具体性・実現可能性 | 市場をちゃんと分析できているか、競合とどう戦うか、成長戦略は絵に描いた餅じゃないか、リスク管理は? |
業界動向・市場環境 | その事業が属する業界や市場は、これから伸びそうか、安定しているか。 |
担保・保証人の有無 | 万が一の際の回収リスクをどれだけカバーできるか。 |
資金繰り表の提出 | 日々のお金の流れをきちんと把握し、管理できているか。これがしっかりしていると、信頼度がぐっと上がります。 |
取引状況 | メインバンクとして、どれだけ深く長いお付き合いがあるか、なども実は影響します。 |
つまり、決算書が少しばかり赤字でも、経営者の方の人柄や熱意、事業の将来性、そしてしっかりとした計画があれば、銀行は「この会社を応援したい!」と思ってくれる可能性があるんです。
「どうせ赤字だから…」と最初から諦めずに、これらのアピールポイントを整理してみましょう。
決算書で見せ方を改善する方法
「赤字なのは事実だし、決算書なんてどうしようもないんじゃ…」
いえいえ、そんなことはありません!
もちろん、数字を偽ることは絶対にいけませんが、「見せ方」を少し工夫するだけで、銀行に与える印象は大きく変わることがあります。
ここでは、決算書のどこに注目し、どう改善すれば融資に繋がりやすくなるのか、具体的なテクニックをお伝えしますね。
粗利率や営業利益率の改善が効く理由
決算書には色々な利益がありますが、銀行が特に注目するのが「粗利率(売上総利益率)」と「営業利益率」です。
- 粗利率(売上総利益率)とは?
売上高から売上原価(仕入れなど)を引いた「売上総利益」が、売上高に対してどれくらいの割合かを示すものです。
これが高いということは、商品やサービスそのものに競争力があり、しっかり利益を生み出せる体質だという証拠。
銀行は「この会社は儲かるビジネスをしているな」と評価してくれます。 - 営業利益率とは?
会社の本業で稼いだ利益である「営業利益」が、売上高に対してどれくらいの割合かを示すものです。
これは、会社が効率的に事業運営できているかを見るための、超重要指標!
たとえ最終的な利益が赤字でも、この営業利益が黒字であれば、「本業ではちゃんと稼げているんだな、一時的な要因で赤字なのかもしれない」と、銀行も少し安心してくれるんです。
これらの利益率を改善することは、会社の「稼ぐ力」そのものが強くなっている証。
だからこそ、銀行からの信頼を得やすく、融資審査でも有利に働くことが多いんですよ。
「うちは粗利率が低いんだよな…」という場合は、まずその原因を探り、改善策を練ることが大切です。
「特別損失」や「一時的な赤字」の正しい伝え方
もし、あなたの会社の赤字が「今年だけ特別に発生した損失」によるものなら、それを銀行にきちんと伝えることが非常に重要です。
「特別損失」とは、例えばこんなものがあります。
- 役員への退職金の支払い
- 使わなくなった固定資産の売却損や廃棄損
- 災害による損失
- 過年度の修正損
これらは、毎期発生するものではない、いわば「一過性の出費」ですよね。
こういう場合は、銀行に対して、
「今回の赤字は、この特別な理由によるもので、本業の収益力が落ちたわけではありません」
「来期以降は、この要因がなくなるので黒字化する見込みです」
と、明確に説明することが肝心です。
口頭だけでなく、できれば「なぜそれが一時的と言えるのか」の根拠や、「翌期以降の具体的な改善策と数値計画」を簡単な書面(経営改善計画書など)にまとめて提出すると、銀行の理解度は格段に深まります。
「たまたま赤字になっただけなんです!」と感情的に訴えるのではなく、冷静に、客観的な事実と今後の見通しを伝える。
これが、銀行との信頼関係を築く第一歩です。
貸借対照表のスリム化:資産・負債の整理術
決算書には、損益計算書(P/L)の他に、貸借対照表(B/S)というものがありますよね。
これは、会社が「どんな財産(資産)を持っていて」「どんな借金(負債)があって」「純粋な自分の取り分(純資産)はいくらか」を示す、いわば会社の健康診断書のようなもの。
この貸借対照表を「スリム化」することも、銀行評価を上げるのに有効な場合があります。
どういうことかと言うと、不要な資産を減らし、効率的な経営をしていることをアピールするんです。
例えば、こんな取り組みが考えられます。
- 使っていない機械や土地(遊休資産)を売却する
- 回収見込みの低い売掛金(不良債権)を整理する
- 売れ残っている在庫(過剰在庫)を減らす努力をする
- 儲かっていない事業(不採算事業)から撤退する
- 借り入れを見直して、少しでも有利な条件のものにまとめる
これらを実行すると、総資産が減り、結果としてROA(総資産利益率)といった財務指標が改善することがあります。
銀行は「この会社は、ちゃんと資産を有効活用して利益を上げようとしているな」「無駄なものを抱え込まず、身軽で健全な経営を目指しているな」と、ポジティブに評価してくれる可能性が高まります。
最近では、売掛金を買い取ってもらう「ファクタリング」という手法も、貸借対照表のオフバランス化(資産と負債を同時に減らすこと)に繋がり、B/Sスリム化の一つの手段として注目されていますよ。
銀行が嫌がる記載・注記とは?
決算書は正直に、が基本ですが、中には銀行が「ん?」と眉をひそめてしまうような記載や注記もあります。
意図していなくても、誤解を招くような表現は避けたいもの。
私が銀行員時代に「これはちょっと…」と感じたのは、例えばこんなケースです。
- 明らかに実態と異なる会計処理: いわゆる粉飾決算を疑われるような、不自然な数字の動き。
- 多額の貸倒引当金: 回収できない売掛金がたくさんあるのかな?と心配になります。
- 使途不明な役員貸付金や仮払金: 社長個人にお金が流れている?何に使ったの?と疑問符がつきます。
- 過度な節税による大きな赤字: 節税自体は悪くありませんが、実態以上に赤字が大きく見えると、本当の経営状況が分かりにくくなります。
- 債務超過(純資産がマイナス): 会社の財産より借金の方が多い状態。これはかなり厳しい評価になります。
- 「継続企業の前提に関する注記(ゴーイングコンサーン)」: 「この会社、事業を続けていくのが難しいかも…」というサイン。これがあると、融資は非常に難しくなります。
もちろん、これらに該当するからといって即アウトではありませんが、もし心当たりがある場合は、なぜそうなっているのか、今後どう改善していくのかを、より丁寧に説明する必要があります。
銀行に余計な疑念を抱かせない、クリーンな決算書を心がけたいですね。
実践!赤字でも前向きに見せる決算書改善ステップ
さて、ここからはもっと具体的に、赤字決算でも銀行に「おっ、この会社は将来性があるかも!」と思わせるための、決算書改善の3ステップをご紹介します。
ちょっとした工夫と準備で、融資の可能性は確実に変わってきますよ!
ステップ1:赤字の理由を明確にする
まず、一番大切なのは「なぜ赤字になったのか?」その理由を自分自身がしっかり把握し、銀行に分かりやすく説明できるようにすることです。
「なんとなく景気が悪くて…」では、銀行も「うーん、それじゃあ先行きも不安だな」となってしまいます。
そうではなく、
- 一過性の要因か、構造的な問題か?
(例:今期だけの特別な支出だったのか、それともビジネスモデル自体に課題があるのか) - 内部要因か、外部要因か?
(例:社内の非効率が原因か、それとも市場全体の冷え込みや競合の台頭が原因か)
このように、赤字の原因を客観的に分析し、特定しましょう。
そして、それを銀行に対して正直に、かつ具体的に伝えるのです。
もし一過性の赤字(例えば、大規模な設備投資や、自然災害による損失など)であれば、「これはあくまで一時的なもので、来期には影響しません」ということを、具体的な根拠と共に示しましょう。
銀行は、あなたが現状をきちんと理解し、課題から目を背けていないかを見ています。
ステップ2:来期改善計画を数字で示す
赤字の理由が明確になったら、次は「じゃあ、どうやって黒字に戻すの?」という銀行の疑問に答える番です。
ここで重要なのは、具体的な改善策と、それが達成された場合の来期の収支計画を「数字で」示すこと。
「頑張ります!」「来期は黒字にします!」という意気込みだけでは、残念ながら銀行は納得してくれません。
そうではなく、
- 売上をどうやって増やすのか? (例:新規顧客開拓策、新商品投入、既存顧客へのアップセルなど)
- コストをどうやって削減するのか? (例:仕入れ先の見直し、業務効率化による残業代削減、不要経費のカットなど)
これらの具体的なアクションプランを立て、それが実行された場合、
「来期の売上は〇〇円、経費は△△円、だから利益は□□円になる見込みです!」
と、具体的な数値目標として提示するのです。
この時、ただ目標を掲げるだけでなく、「なぜその目標が達成可能と言えるのか」という根拠(例えば、具体的な行動計画や市場の成長予測など)も合わせて説明できると、計画の信頼性がぐっと高まります。
「この融資があれば、こんな風に経営が改善して、ちゃんと返済もできますよ」というストーリーを、数字で語れるように準備しましょう。
ステップ3:補足資料や事業計画書で信頼を補強する
決算書だけでは伝えきれない、あなたの会社の魅力や将来性をアピールするために、補足資料を準備しましょう。
特に赤字決算の場合は、この補足資料が銀行の判断を左右するケースも少なくありません。
具体的には、以下のような資料が有効です。
- 事業計画書(経営改善計画書):
これが一番重要です!赤字の理由、具体的な改善策、将来の収益見通し(数値計画)、そして融資を受けた場合の資金使途と返済計画などを、分かりやすくまとめます。
あなたの会社の「未来の設計図」であり、銀行に対する「約束の書」とも言えます。 - 資金繰り表:
将来のお金の出入りを予測した表です。これがあると、銀行は「ちゃんと資金管理ができているな」「返済も問題なさそうだな」と安心できます。 - 試算表:
決算期末から時間が経っている場合は、直近の業績を示す試算表を提出しましょう。もし業績が回復傾向にあれば、絶好のアピール材料になります。 - その他、計画の裏付けとなる資料:
例えば、大きな契約が取れそうならその契約書(案)や見積書、新しい販売チャネルの具体的な計画書、市場調査のデータ、製品やサービスのパンフレットなども、説得力を増すのに役立ちます。
これらの資料を丁寧に準備することで、「この経営者は、現状をしっかり分析し、将来に向けて具体的な手を打とうとしている」という真摯な姿勢が伝わり、銀行からの信頼を得やすくなります。
【補足】クラウド会計で見せたい数値を整えるテクニック
最近は、クラウド会計ソフトを導入している中小企業も増えてきましたね。
実は、このクラウド会計ソフト、銀行に提出する資料作成にも役立つんです。
多くのクラウド会計ソフトには、
- リアルタイムで業績を把握できる機能
- 見やすいレポートを自動で作成してくれる機能
- 簡単な将来予測シミュレーションができる機能
などが備わっています。
これらを活用すれば、銀行に対して、常に最新の財務状況や改善計画の進捗を、分かりやすい形で示すことができます。
例えば、部門別やプロジェクト別に会計データを入力していれば、「どの事業が儲かっていて、どこに課題があるのか」を明確に示し、改善策の具体性をアピールすることも可能です。
また、一部のソフトには金融機関とのデータ連携機能があり、情報共有がスムーズになる場合も。
「うちの会計ソフト、入力するだけだった…」という方も、ぜひ一度、こういった便利機能がないかチェックしてみてください。
銀行への見せ方の幅が広がるかもしれませんよ。
銀行に伝わる資料作成のコツ
どんなに素晴らしい事業計画も、それが銀行に「伝わらなければ」意味がありません。
ここでは、元銀行員の私が「これは刺さる!」と感じた、銀行に響く資料作成のコツをお伝えします。
ちょっとした意識の違いで、あなたの会社の評価は大きく変わるかもしれませんよ。
フォーマットより中身!資料に盛り込むべき3要素
立派な装丁の資料や、デザイン性の高いグラフも目を引きますが、銀行が本当に知りたいのは「見た目」よりも「中身」です。
特に、以下の3つの要素がしっかりと盛り込まれているかどうかが、融資判断の分かれ目になると言っても過言ではありません。
1. 事業の魅力と将来性
- あなたの会社の「強み」は何ですか?
- どんな市場で、どんなチャンスを掴もうとしていますか?
- ライバルと比べて、どこが優れていますか?
- これからどんな風に成長していく計画ですか?
情熱を持って、あなたの事業の可能性を語ってください。
銀行員も人間です。「この事業、面白そう!応援したい!」と思わせることが大切です。
2. 返済能力の具体性
- 融資してもらったお金を、具体的に何に使いますか?(ここ、すごく大事です!)
- それによって、どれくらいの収益アップが見込めますか?
- 毎月、いくらずつなら無理なく返済できますか?その根拠は?
「貸したお金が、ちゃんと計画通りに使われて、利益を生み出し、そして確実に返ってくる」という安心感を、具体的な数字と計画で示しましょう。
資金繰り表や収益計画書が、ここでの強力な武器になります。
3. 経営者の信頼性
- 経営者であるあなたのこれまでの経験や実績は?
- この事業にかける想いの強さは?
- もし計画通りにいかなかった場合のリスクを認識し、その対策は考えていますか?
最終的に「この人になら任せられる」「この人ならきっとやり遂げるだろう」と銀行員に信頼してもらうことが、何よりも重要です。
誠実な姿勢と、事業に対する真摯な想いを伝えましょう。
「銀行目線」で伝えるにはどう書けばいい?
資料を作る際、「銀行員って、どんなことを考えてるんだろう?」と想像してみることが大切です。
銀行員は、毎日たくさんの会社の資料を見ています。
その中で「おっ」と目を引く、そして「なるほど!」と納得してもらえる資料にするには、ちょっとしたコツがあるんです。
- 結論から先に書く:
「当社は〇〇を実現するために、△△の資金が必要です。それにより□□の効果が見込めます」のように、まず結論を伝え、その後に詳細な説明を続けると、忙しい銀行員にも内容が伝わりやすくなります。 - 専門用語は分かりやすく:
業界特有の専門用語や略語は、銀行員が知らないこともあります。「つまり、こういうことです」と、誰にでも分かる平易な言葉で説明するよう心がけましょう。 - 図やグラフを効果的に使う:
数字の羅列だけでは、なかなか頭に入ってきません。売上の推移、市場シェア、コスト構造など、視覚的にパッと見て理解できるような図やグラフを適度に使うと、説得力が格段にアップします。 - 客観的なデータで裏付ける:
「売上が伸びるはずです!」だけでは弱いです。「この市場は年〇%成長しており、当社の新技術なら△%のシェア獲得が見込めます」のように、市場データや過去の実績など、客観的な根拠を示すことが重要です。 - リスクも正直に、そして対策もセットで:
「絶対に成功します!」と言うよりも、「こういうリスクが考えられますが、その場合はこう対処します」と、リスクを認識し、それに対する備えがあることを示した方が、銀行は「この経営者は現実をちゃんと見ているな」と信頼してくれます。
銀行員は「貸したお金が、安全かつ確実に回収できるか」を常に考えています。
その不安を取り除き、安心感と期待感を与えるような資料作りを意識してみてください。
私が銀行員だった頃に刺さった事業者の共通点
私が銀行員として多くの中小企業の社長さんとお会いしてきた中で、「この社長なら応援したい!」「この会社は伸びそうだ!」と強く感じた事業者の方々には、いくつかの共通点がありました。
これは、決算書が赤字かどうか以上に、融資判断に影響していたように思います。
- 自分の事業に、ものすごい情熱と明確なビジョンを持っている。
話を聞いているだけでワクワクするような、そんな社長さんが多かったです。「なぜこの事業をやっているのか」「将来どうなりたいのか」が明確で、その熱意がこちらにも伝わってくるんです。 - 自社の「強み」も「弱み」も、客観的にちゃんと分かっている。
良いことばかり言うのではなく、「うちはここがまだ弱いんです。だからこう改善したいんです」と正直に話せる方は信頼できました。 - 数字に強い。そして、計画に具体性がある。
「だいたいこれくらい」ではなく、「〇〇を△△個売って、単価が□□円だから…」と、ご自身のビジネスの数字をしっかり把握し、具体的な計画を語れる方は説得力がありました。 - 質問に対して、誠実に、そして的確に答えられる。
どんな質問にもごまかさず、自分の言葉でしっかりと答えてくれる。分からないことは「確認します」と言える素直さも大切です。 - 銀行とのコミュニケーションを大切にし、情報を積極的に開示してくれる。
良い時も悪い時も、こまめに状況を報告してくれる社長さんとは、自然と信頼関係が深まりました。 - 過去の失敗から学び、それを次に活かそうとしている。
「以前こんな失敗をしましたが、そこから学んで今はこうしています」という話は、むしろ好印象でした。 - そして何より、約束を守る。
提出書類の期限を守る、返済をきちんと行う。当たり前のことですが、これが信頼の基本です。
これらの共通点は、特別な才能が必要なわけではありません。
日々の事業に対する真摯な姿勢と、銀行との誠実なコミュニケーションの積み重ねが、いざという時の「信頼」に繋がるのだと、私は強く感じています。
資金調達の選択肢を広げよう
「銀行融資がダメだったら、もう終わりだ…」
そんな風に思っていませんか?
確かに銀行融資は、中小企業にとって最も身近な資金調達方法の一つです。
でも、お金を調達する方法は、銀行融資だけではありません。
あなたの会社の状況や目的に合わせて、もっと色々な選択肢があるんですよ。
ここでは、中小企業が活用できる多様な資金調達法をご紹介します。
銀行融資だけじゃない!中小企業に合う資金調達法
銀行からの借入以外にも、中小企業が利用できる資金調達の道はたくさんあります。
それぞれの特徴を理解して、上手に使い分けたいですね。
- 公的融資:
- 日本政策金融公庫: 政府系の金融機関で、特に創業期の企業や小規模事業者にとっては心強い味方です。「新創業融資制度」や、経営が悪化した時のための「セーフティネット貸付」など、様々な融資制度があります。
- 地方自治体の制度融資: 都道府県や市区町村が、地元の金融機関や信用保証協会と連携して行っている融資制度です。比較的低利で借りられることが多いのが特徴です。
- 補助金・助成金:
国や地方自治体が、特定の目的(例えば、新技術の開発、IT導入、雇用促進など)に取り組む企業を支援するために支給するお金です。原則として返済不要なのが最大のメリット!ただし、申請手続きが煩雑だったり、後払い(事業実施後に支給)だったりすることが多いので注意が必要です。 - ファクタリング:
あなたの会社が持っている「売掛金(得意先からの未回収の売上代金)」を、ファクタリング会社に買い取ってもらうことで、入金日よりも早く現金化する方法です。急な資金が必要になった時に役立ちます。 - クラウドファンディング:
インターネットを通じて、不特定多数の人々から少額ずつ資金を集める方法です。新しい商品やサービスの開発、社会貢献的なプロジェクトなどで活用されることが多いですね。資金調達だけでなく、PR効果やファン獲得にも繋がる可能性があります。 - ビジネスローン:
主にノンバンク(消費者金融や信販会社など)が提供している事業者向けのローンです。銀行融資に比べて審査がスピーディーで柔軟なことが多いですが、金利は高めになる傾向があります。 - エクイティファイナンス(出資):
これは「借入」ではなく「出資」なので、返済の義務はありません。その代わり、会社の株式の一部を投資家(ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家など)に渡すことになります。将来的に大きく成長したい企業向けの選択肢です。
他にも、使っていない資産を売却したり、小規模企業共済の貸付制度を利用したりする方法もあります。
「うちは銀行だけ」と決めつけずに、視野を広げてみましょう。
ファクタリング・クラファンの活用実例
最近よく耳にする「ファクタリング」と「クラウドファンディング」。
具体的にどんな風に活用できるのか、イメージしにくい方もいるかもしれませんね。
ファクタリングの活用イメージ:
「来月、大きな支払いがあるのに、得意先からの入金が再来月なんだよな…一時的に資金がショートしそう!」
こんな時、ファクタリングが役立ちます。
その得意先への売掛金をファクタリング会社に買い取ってもらえば、最短で即日~数日中に現金が手に入ります。
手数料はかかりますが、黒字倒産を防いだり、急な資金ニーズに対応したりするのに有効です。
担保や保証人が不要なケースが多く、赤字決算や税金滞納があっても利用できる場合があるのも特徴です。
クラウドファンディングの活用イメージ:
「環境に優しい新素材を使った商品を開発したんだけど、量産するための初期費用が足りない…」
こんな時、クラウドファンディングでプロジェクトを立ち上げ、多くの人から支援を募ることができます。
支援してくれた人には、完成した商品を送ったり、特別な体験を提供したりといった「リターン」を用意するのが一般的です。
資金調達だけでなく、商品発売前に市場の反応を見たり、応援してくれるファンを増やしたりする効果も期待できますよ。
どちらの方法も、メリット・デメリットをしっかり理解した上で、自社の状況に合わせて賢く活用したいですね。
「資金調達の多様化」が生き残りの鍵になる理由
なぜ、こんなに色々な資金調達方法を知っておく必要があるのでしょうか?
それは、資金調達の方法を一つに絞ってしまうと、その道が絶たれた時に行き詰まってしまうリスクがあるからです。
例えば、銀行融資だけに頼っていると…
- 景気が悪化して銀行全体の融資姿勢が厳しくなった時
- 自社の業績が一時的に悪化して、銀行の評価が下がった時
- 担当者が変わって、急に話が通じにくくなった時
こんな場合に、途端に資金繰りに困ってしまうかもしれません。
でも、普段から色々な選択肢を持っていれば、
- 事業の成長ステージや、その時々の状況に応じて、最適な方法を選べる。
- 一つの方法がダメでも、他の方法でカバーできる可能性が広がる。
- 金利の変動リスクや、金融機関の方針変更リスクにも対応しやすくなる。
このように、資金調達の手段を複数持っておくこと(=多様化)は、変化の激しい今の時代を中小企業が生き抜いていくための、いわば「保険」のようなもの。
そして、それは守りだけでなく、新しい事業チャンスを掴むための「武器」にもなり得るのです。
「うちは大丈夫」と思っている会社こそ、いざという時のために、資金調達の引き出しを増やしておくことを強くおすすめします。
まとめ
「赤字だから融資は無理…」
そう諦めかけていた社長さん、今日の話を聞いて、少し希望が見えてきたのではないでしょうか?
確かに、赤字決算は銀行にとってマイナスイメージになりやすいのは事実です。
でも、大切なのは、赤字という「結果」そのものよりも、その「理由」と「未来への改善策」を、いかに銀行に分かりやすく、そして誠実に伝えられるか、ということ。
決算書は、単なる過去の成績表ではありません。
見せ方や伝え方を工夫することで、それは「未来の信用」を作り出すための強力なツールに変わるのです。
今日お話しした、
- 赤字の理由を明確にし、具体的な改善計画を数字で示すこと。
- 事業計画書などの補足資料で、あなたの会社の魅力と将来性を伝えること。
- 銀行目線を意識した、分かりやすい資料作りを心がけること。
- そして、銀行融資以外の資金調達の選択肢も持っておくこと。
これらのポイントを一つでも意識して行動に移せば、あなたの会社の資金調達の可能性は、きっと今よりもぐっと広がるはずです。
「うちの会社でも、できることがあるかもしれない!」
そう感じていただけたら、私にとってこれ以上嬉しいことはありません。
今日からできる小さな改善が、あなたの会社の次の大きなチャンスに繋がることを心から応援しています!
もし、「もっと具体的にうちの会社の場合はどうしたら…?」と悩んだら、いつでも気軽に専門家に相談してみてくださいね。
一緒に、未来を切り開いていきましょう!